遺産分割協議がまとまらない不動産は売却できる?共有状態を解決する方法を解説

相続・共有トラブル

相続した不動産について、 相続人同士の意見が合わず、 遺産分割協議がまとまらないケースがあります。

たとえば、

  • 兄は売却したいが弟は実家を残したい
  • 誰が不動産を取得するか決まらない
  • 不動産の評価額について意見が合わない
  • 一部の相続人が話し合いに応じない
  • 相続人の一人と連絡が取れない

といったケースです。

遺産分割協議は、 原則として相続人全員の合意が必要です。

そのため、 協議がまとまっていない段階で、 一部の相続人だけが相続不動産全体を 自由に第三者へ売却することはできません。

一方で、 遺産分割協議がまとまらないからといって、 解決方法がないわけではありません。

この記事では、 遺産分割協議がまとまらない不動産の売却、 話し合いで解決する方法、 遺産分割調停・審判、 共有持分として取得した後の売却まで解説します。

  1. 遺産分割協議がまとまらないと不動産は売却できない?
  2. 遺産分割協議とは?
  3. 遺産分割協議がまとまらない主な原因
    1. ① 売るか残すかで意見が違う
    2. ② 誰が不動産を取得するか決まらない
    3. ③ 不動産の評価額で意見が合わない
    4. ④ 生前贈与などをめぐって意見が違う
    5. ⑤ 相続人同士の関係が悪い
  4. 遺産分割協議がまとまらない場合の主な5つの解決方法
    1. 方法① 不動産を売却して現金で分ける
    2. 方法② 一人が不動産を取得して代償金を支払う
    3. 方法③ 不動産を共有で相続する
    4. 方法④ 遺産分割調停を申し立てる
    5. 方法⑤ 遺産分割審判で決めてもらう
  5. 5つの解決方法を比較
    1. 共有で相続した場合の持分価格を確認
  6. 遺産分割前に自分の「相続分」を売却することはできる?
  7. 共有で相続した後なら自分の持分だけ売却できる
  8. 遺産分割協議がまとまらないから共有にするのは注意
  9. 相続登記が終わっていない場合
  10. 相続人が多いと遺産分割が難しくなりやすい
  11. 相続人の一人が話し合いを拒否している場合
  12. 相続人の一人と連絡が取れない場合
  13. 遺産分割調停の基本的な流れ
    1. 共有で相続した場合の売却価格を確認
  14. 遺産分割協議を長期間放置するとどうなる?
    1. 次の相続が発生する可能性がある
    2. 関係者が増える可能性がある
    3. 連絡が取れない人が出てくる可能性がある
    4. 不動産の管理負担が続く
    5. 相続登記の義務にも注意する
  15. 遺産分割協議がまとまらない場合に避けたいこと
    1. 一部の相続人だけで不動産全体を売却する
    2. 話し合いが面倒だから安易に共有名義にする
    3. 不動産の価格を確認せず代償金を決める
    4. 感情だけで協議を続ける
  16. 遺産分割協議がまとまらない場合によくある質問
    1. 相続不動産の分け方で迷っている方へ
  17. まとめ|まとまらない場合は「共有にする」以外の方法も比較する

遺産分割協議がまとまらないと不動産は売却できない?

相続人全員が、 相続不動産全体を第三者へ売却することに合意できれば、 売却して売却代金を分ける方法があります。

しかし、 一人でも売却に反対している場合には、 一部の相続人だけで不動産全体を 通常の売買によって処分することはできません。

また、 誰がその不動産を取得するのか決まっていない段階では、 特定の相続人が、

「自分の法定相続分だけ不動産として自由に売る」

と単純に考えるのも注意が必要です。

遺産分割前と、 遺産分割によって共有持分を取得した後では、 権利関係が異なるためです。

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、 相続人全員で、 被相続人が残した財産を 誰がどのように取得するか話し合うことです。

たとえば遺産に、

  • 実家:4,000万円
  • 預貯金:2,000万円

があり、 相続人が兄弟2人だったとします。

必ずしも実家と預貯金を それぞれ2分の1ずつ共有しなければならないわけではありません。

たとえば、

  • 兄が実家を取得する
  • 弟が預貯金を取得する
  • 差額を代償金で調整する

など、 相続人全員が合意できる内容で分割できます。

遺産分割協議がまとまらない主な原因

① 売るか残すかで意見が違う

実家などでは、

「思い出があるから残したい」

という相続人と、

「利用しないので売却したい」

という相続人で意見が分かれることがあります。

② 誰が不動産を取得するか決まらない

複数の相続人が 不動産を取得したいと希望している場合、 誰が取得するかでもめることがあります。

③ 不動産の評価額で意見が合わない

一人が不動産を取得し、 他の相続人へ代償金を支払う場合には、 不動産をいくらと評価するかが重要です。

評価額について意見が合わず、 協議が止まるケースがあります。

④ 生前贈与などをめぐって意見が違う

相続人の一人が生前に多くの財産を受け取っていたなど、 過去の財産移転について争いになる場合があります。

⑤ 相続人同士の関係が悪い

もともと兄弟・親族間の関係が悪く、 相続をきっかけに対立が表面化するケースもあります。

遺産分割協議がまとまらない場合の主な5つの解決方法

方法① 不動産を売却して現金で分ける

相続人全員が売却には合意できるのであれば、 不動産を第三者へ売却し、 売却代金を合意した割合で分ける方法があります。

現物の不動産を誰が取得するか決める必要がなくなるため、 解決しやすくなる場合があります。

方法② 一人が不動産を取得して代償金を支払う

実家を残したい相続人がいる場合には、 その人が不動産を取得し、 他の相続人へ金銭を支払う方法があります。

この方法では、

  • 不動産の評価額
  • 代償金の金額
  • 支払方法

について合意する必要があります。

方法③ 不動産を共有で相続する

相続人同士で不動産を共有する方法もあります。

たとえば兄弟2人が 2分の1ずつ取得する方法です。

ただし、 協議がまとまらないからという理由だけで 安易に共有名義にすることは注意が必要です。

共有後も、

  • 売却
  • 管理
  • 修繕
  • 固定資産税
  • 次の相続

などで再びトラブルになる可能性があります。

方法④ 遺産分割調停を申し立てる

相続人同士の話し合いで解決できない場合には、 家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てる方法があります。

調停では、 裁判官や調停委員を介して 相続人間の合意を目指します。

方法⑤ 遺産分割審判で決めてもらう

調停でも合意できない場合には、 遺産分割審判へ移行し、 裁判所が具体的な分割方法を判断することがあります。

5つの解決方法を比較

方法 特徴 注意点
売却して現金分割 不動産を現金化して整理 売却について合意が必要
代償分割 一人が不動産を取得 評価額・代償金の合意が必要
共有で相続 複数人で不動産を取得 将来再び共有トラブルになる可能性
遺産分割調停 家庭裁判所で話し合う 時間がかかる場合あり
遺産分割審判 裁判所が分割方法を判断 希望どおりになるとは限らない

共有で相続した場合の持分価格を確認

遺産分割後に共有持分を取得する場合、 その持分を売却したときの価格を確認しておくと 分割方法を比較しやすくなります。

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遺産分割前に自分の「相続分」を売却することはできる?

遺産分割前でも、 共同相続人が自分の相続分そのものを 第三者へ譲渡することは法律上あり得ます。

ただし、 これは、

特定の不動産について自分の共有持分だけを通常の方法で売却することとは異なります。

相続分を第三者へ譲渡すると、 その第三者が遺産分割に関与することになり、 相続人同士の関係がさらに複雑になる可能性があります。

また、 共同相続人以外の第三者へ相続分が譲渡された場合には、 他の共同相続人に取戻権が認められる場合があります。

そのため、 遺産分割前に自分の権利を処分したい場合には、 通常の共有持分売却と同じものとして考えず、 事前に弁護士などへ確認することが重要です。

共有で相続した後なら自分の持分だけ売却できる

遺産分割協議によって、 複数の相続人が不動産を共有で取得することが決まり、 必要な相続登記を行った場合には、 それぞれが共有持分を所有することになります。

たとえば、

  • 兄:1/2
  • 弟:1/2

で相続登記をした場合、 兄は自分の1/2持分について 売却を検討できます。

自分が取得した共有持分だけを売却する場合には、 原則として他の共有者の同意は必要ありません。

ただし、 不動産全体を第三者へ売却する場合には、 原則として共有者全員の協力が必要です。

遺産分割協議がまとまらないから共有にするのは注意

遺産分割で意見が合わないと、

「とりあえず法定相続分どおり共有にしておこう」

と考えることがあります。

しかし、 共有名義にすると、 遺産分割の問題が終わったように見えても、 その後に別の共有問題が発生する可能性があります。

たとえば、

  • 一人だけが不動産を利用する
  • 一人は売りたいが他の人は売りたくない
  • 固定資産税の負担でもめる
  • 修繕費でもめる
  • 共有者の一人が第三者へ持分を売却する
  • さらに相続が発生して共有者が増える

などです。

そのため、 共有で相続する場合には、 現在の遺産分割だけでなく、 将来その不動産をどうするのかまで考えて判断すること が重要です。

相続登記が終わっていない場合

遺産分割協議が成立しても、 登記名義が被相続人のままになっている場合があります。

この場合でも、 売却相談や査定を進めることはできます。

ただし、 実際に取得した共有持分を買主へ移転するためには、 必要な相続登記を行うことになります。

相続人が多いと遺産分割が難しくなりやすい

相続人が2人、3人ではなく、 10人以上いるようなケースでは、 遺産分割協議が複雑になる可能性があります。

相続人が多くなると、

  • 全員の連絡先を確認する
  • 全員へ説明する
  • 不動産の評価について合意する
  • 誰が取得するか決める
  • 必要書類を揃える

といった作業も増えます。

また、 一人でも所在不明者や海外在住者がいると、 さらに手続きが複雑になることがあります。

相続人の一人が話し合いを拒否している場合

相続人は分かっているものの、 一人が遺産分割協議そのものに応じないケースがあります。

この場合、 その人を除外して 他の相続人だけで有効な遺産分割協議を成立させることは 原則としてできません。

話し合いによる解決が難しい場合には、 家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法があります。

調停でも合意できなければ、 審判によって裁判所が分割方法を判断することがあります。

相続人の一人と連絡が取れない場合

相続人の一人が、

  • 長期間疎遠
  • 住所が分からない
  • 海外へ移住している
  • 生死が分からない

というケースもあります。

遺産分割協議を成立させるためには、 まず相続人の所在を確認する必要があります。

必要な調査をしても所在が確認できない場合には、 個別の状況に応じて 裁判所の制度を利用できるか検討します。

遺産分割調停の基本的な流れ

STEP1|家庭裁判所へ申立て

相続人間で話し合いがまとまらない場合には、 家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てます。

STEP2|相続財産・相続人を確認

相続人や対象となる財産、 不動産の内容などを整理します。

STEP3|各相続人の希望を確認

調停委員などを介しながら、 各相続人が、

  • 不動産を取得したいのか
  • 売却したいのか
  • 代償金を希望するのか

などを確認していきます。

STEP4|合意を目指す

不動産の評価や他の相続財産なども踏まえて、 相続人全員が合意できる分割方法を検討します。

STEP5|合意できなければ審判へ

調停で合意できなかった場合には、 原則として審判手続きへ移行し、 裁判所が分割方法を判断します。

共有で相続した場合の売却価格を確認

遺産分割の選択肢を比較するために、 共有持分として取得した場合の査定価格を確認できます。

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遺産分割協議を長期間放置するとどうなる?

次の相続が発生する可能性がある

遺産分割が終わらないまま相続人の一人が死亡すると、 その人の権利関係について さらに相続が発生する可能性があります。

関係者が増える可能性がある

次の相続によって複数の相続人が加われば、 遺産分割に関係する人数が増えることがあります。

連絡が取れない人が出てくる可能性がある

時間が経つほど、 海外移住や転居などによって 相続人の所在確認が難しくなることがあります。

不動産の管理負担が続く

遺産分割がまとまらなくても、 建物の老朽化や固定資産税などの問題は続きます。

相続登記の義務にも注意する

相続登記は2024年4月1日から義務化されています。

遺産分割が成立していない場合でも、 相続登記の申請義務との関係を確認する必要があります。

必要に応じて相続人申告登記などの制度も含め、 司法書士等へ確認しましょう。

放置しないことが重要

遺産分割がまとまらない状態を長期間放置すると、 ・数次相続
・相続人の増加
・所在不明者の発生
・不動産の老朽化
・税金や管理費の継続 などにより、 現在より解決が難しくなる可能性があります。

遺産分割協議がまとまらない場合に避けたいこと

一部の相続人だけで不動産全体を売却する

遺産分割前の相続不動産を、 一部の相続人だけの判断で 通常の売買によって全体処分することはできません。

話し合いが面倒だから安易に共有名義にする

共有名義にすれば その場の遺産分割を終えられる場合がありますが、 将来の売却・管理・相続で 新しいトラブルが発生する可能性があります。

不動産の価格を確認せず代償金を決める

一人が不動産を取得して 他の相続人へ代償金を支払う場合には、 不動産評価が重要になります。

複数の査定などを参考にして、 価格の根拠を整理しましょう。

感情だけで協議を続ける

相続人同士の関係が悪化している場合には、 当事者だけで何度も話し合うことで 対立が深くなることがあります。

必要に応じて、 弁護士や家庭裁判所の調停などを利用することも検討します。

遺産分割協議がまとまらない場合によくある質問

Q. 一人でも反対したら遺産分割協議は成立しませんか?

遺産分割協議は原則として相続人全員の合意が必要です。 一部の相続人だけで遺産分割協議を成立させることはできません。 話し合いで合意できない場合には、 遺産分割調停などを検討します。

Q. 他の相続人が反対していても不動産を売却できますか?

遺産分割前の不動産全体を一部の相続人だけで 通常の売買により処分することはできません。 一方、遺産分割後に自分が共有持分を取得した場合には、 その自分の持分だけなら原則として他の共有者の同意なく売却できます。

Q. 遺産分割調停をすれば必ず売却になりますか?

必ず売却になるわけではありません。 不動産を一人が取得する方法や、 他の財産との調整なども含めて解決方法を検討します。

Q. とりあえず法定相続分で共有登記しても大丈夫ですか?

法定相続分による登記を行うこと自体と、 その方法が将来的に最適かどうかは別です。 共有にすると、売却・管理・修繕・次の相続などで 問題が複雑になる可能性があります。 将来の利用方法まで考えて判断しましょう。

Q. 相続人の一人と連絡が取れません

遺産分割協議には原則として相続人全員の参加が必要です。 まず所在確認を行い、 調査しても所在が分からない場合には、 状況に応じた法的制度を検討する必要があります。

Q. 共有で相続した後なら自分の持分だけ売れますか?

遺産分割によって自分が共有持分を取得し、 必要な相続登記を行った後であれば、 自分の共有持分だけを原則として他の共有者の同意なく売却できます。

相続不動産の分け方で迷っている方へ

共有で取得した場合の持分価格を確認しておくことで、 売却・代償分割・共有などの選択肢を比較しやすくなります。

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まとめ|まとまらない場合は「共有にする」以外の方法も比較する

遺産分割協議がまとまらない場合でも、 解決方法がないわけではありません。

主な方法としては、

  • 不動産を売却して現金で分ける
  • 一人が不動産を取得して他の相続人へ代償金を支払う
  • 複数の相続人で共有する
  • 家庭裁判所の遺産分割調停を利用する
  • 調停でまとまらなければ遺産分割審判で解決を図る

などがあります。

特に注意したいのは、 「話し合いがまとまらないから、とりあえず共有名義にする」ことが 必ずしも最善とは限らないという点です。

共有名義にすると、 その後、

  • 不動産を売りたい人と残したい人で意見が分かれる
  • 固定資産税や修繕費でもめる
  • 一部の共有者だけが不動産を利用する
  • 共有持分が第三者へ売却される
  • 次の相続によって共有者が増える

など、 新たな問題が発生する可能性があります。

一方、 遺産分割によって共有持分を取得し、 必要な相続登記を行った後であれば、 自分が所有する共有持分だけを 原則として他の共有者の同意なく売却できます。

そのため、 遺産分割を考える段階で、

  • 不動産全体はいくらなのか
  • 共有で取得した場合の持分はいくらで売れるのか
  • 誰か一人が取得できるのか
  • 代償金を支払えるのか
  • 将来的に不動産を利用する人がいるのか

まで確認しておくと、 分割方法を比較しやすくなります。

遺産分割協議がまとまらないときは、 その場を終わらせるためだけに共有名義にするのではなく、 売却・代償分割・調停・審判なども含めて、 将来の共有トラブルまで考えた方法を選ぶことが重要です。

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