共有名義の不動産を売却したいのに、 他の共有者から、
「絶対に売りたくない」
「実家だから残したい」
と反対されるケースがあります。
この場合、 不動産全体を自分一人の判断だけで売却することは原則としてできません。
不動産全体の売却には、 原則として共有者全員の協力が必要だからです。
一方、 自分が所有している共有持分だけであれば、 原則として他の共有者の同意なく売却できます。
そのため、 共有者が全体売却に反対していても、 自分の持分だけを売却して共有関係から離れる方法があります。
この記事では、 共有者が売却に反対している場合にできること、 共有不動産を処分する主な方法、 話し合いで解決できない場合の共有物分割まで解説します。
共有者が反対すると不動産全体は売却できない?
原則として、 共有不動産全体を第三者へ売却するためには 共有者全員の協力が必要です。
たとえば、
- 兄:1/2
- 弟:1/2
で実家を共有している場合、 兄だけが売却に賛成していても、 弟が反対していれば 兄一人の判断で実家全体を第三者へ売却することはできません。
兄が処分できるのは、 原則として自分が所有している1/2持分です。
自分の共有持分だけなら売却できる
他の共有者が不動産全体の売却に反対していても、 自分の共有持分だけなら売却を検討できます。
先ほどの例なら、 兄は自分の1/2持分を第三者へ売却できます。
その場合、
売却前:
- 兄:1/2
- 弟:1/2
売却後:
- 買主:1/2
- 弟:1/2
という共有状態になります。
つまり、 不動産全体は売れなくても、 自分だけ共有関係から離れることは可能 ということです。
共有者が反対している場合の5つの選択肢
① 共有者全員で不動産全体を売却する
最もシンプルなのは、 共有者全員が話し合って不動産全体を売却する方法です。
不動産全体として市場へ売却できるため、 持分単独で売却する場合とは市場性や価格条件が異なります。
ただし、 反対している共有者を説得できなければ この方法は進められません。
② 反対している共有者に自分の持分を買ってもらう
「不動産を残したい」という共有者がいるのであれば、 その共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法があります。
たとえば兄が売りたい、 弟が実家を残したい場合、 弟が兄の1/2持分を取得すれば、 弟が原則として100%所有する状態になります。
売りたい人は現金化でき、 残したい人は不動産を残せるため、 双方の希望が一致する可能性があります。
③ 自分が他の共有者の持分を買い取る
逆に、 自分が不動産を残したい場合には、 他の共有者の持分を買い取る方法があります。
すべての持分を取得できれば、 共有状態を解消して単独所有にできます。
④ 自分の共有持分だけを第三者へ売却する
他の共有者が話し合いに応じない場合には、 自分の持分だけを第三者へ売却する方法があります。
自分の共有持分だけの売却なら、 原則として他の共有者の同意は必要ありません。
持分全部を売却すれば、 自分は原則として共有関係から離れられます。
⑤ 共有物分割を検討する
共有状態そのものを解消したいものの、 共有者同士の話し合いで解決できない場合には、 共有物分割を検討することがあります。
共有物分割では、 不動産の状況などに応じて 共有状態を解消する方法を検討します。
5つの方法を比較
| 方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 不動産全体を売却 | 共有関係を全員で解消できる | 原則全員の協力が必要 |
| 相手に持分を売る | 第三者を共有関係へ入れない | 価格・購入意思の合意が必要 |
| 相手の持分を買う | 単独所有を目指せる | 購入資金が必要 |
| 持分だけ第三者へ売る | 自分だけ共有関係から離れられる | 第三者が新しい共有者になる |
| 共有物分割 | 共有状態そのものの解消を目指せる | 協議・裁判等が必要になる場合あり |
まず他の共有者へ持分買取を提案する方法
共有者が、
「不動産そのものを残したい」
という理由で全体売却に反対しているのであれば、 自分の持分を買い取ってもらえないか提案する方法があります。
この方法であれば、 不動産自体を第三者へ売却する必要はありません。
ただし、
- いくらで売るか
- 相手に購入資金があるか
- いつ決済するか
について合意する必要があります。
価格でもめないためにも、 事前に不動産全体の市場価格や 自分の共有持分の価値を確認しておくことが重要です。
共有者との関係が悪く話し合えない場合
すでに共有者との関係が悪化しており、
- 電話に出てくれない
- 話し合うと口論になる
- 売却の話をするだけで拒否される
- 直接会いたくない
というケースもあります。
この場合でも、 自分の共有持分だけを売却するのであれば、 原則として他の共有者の同意は必要ありません。
ただし、 売却後には買主が新しい共有者になるため、 その点まで理解したうえで判断しましょう。
持分だけ売却する場合の注意点
共有者が全体売却に反対している場合でも、 自分の共有持分だけを売却することは可能です。
ただし、 持分単独売却にはいくつか注意点があります。
売却後は買主が新しい共有者になる
自分の持分を第三者へ売却すると、 その第三者が自分に代わって新しい共有者になります。
たとえば、
- 兄:1/2
- 弟:1/2
という状態で、 兄が自分の1/2をA社へ売却すると、
- A社:1/2
- 弟:1/2
という共有状態になります。
他の共有者に永久に知られないわけではない
自分の共有持分を売却するために、 原則として他の共有者から事前に承諾を得る必要はありません。
しかし、 売却後には所有権移転登記が行われます。
また、 買主が新しい共有者として 他の共有者へ連絡する可能性もあります。
そのため、 「同意が不要」と 「売却したことが絶対に分からない」は別 と考えましょう。
持分単独の価格は単純按分額とは限らない
たとえば不動産全体が4,000万円で、 自分の持分が1/2なら、 単純按分では2,000万円です。
しかし、 共有持分だけを第三者へ売却する場合には、 必ず2,000万円で売れるとは限りません。
買主は購入後も他の共有者との共有状態になるため、 共有関係や利用状況などが査定へ影響する可能性があります。
・不動産全体の市場価格
・自分の持分割合
・共有持分単独の査定価格
・現在の利用状況
・売却後の共有関係
・契約条件 を確認してから判断することが重要です。
共有物分割で共有状態を解消する方法
共有者が全体売却に反対し、 持分売買についても話し合いがまとまらない場合には、 共有物分割を検討することがあります。
共有物分割とは、 共有状態そのものを解消するための手続きです。
まずは共有者同士で、 どのように共有状態を解消するのか協議します。
現物分割
土地などを物理的に分けて、 それぞれが単独で所有する方法です。
ただし、 土地の形状・面積や建物の存在などによっては、 現実的に分割できないことがあります。
代償分割
共有者の一人が不動産を取得し、 他の共有者へ持分価値に応じた金銭を支払う方法です。
不動産を残したい共有者がいる場合には、 検討できる方法の一つです。
換価分割
不動産を売却して、 その代金を持分などに応じて分ける方法です。
協議で任意売却できる場合もありますが、 共有物分割訴訟の結果として競売による換価となるケースもあります。
共有物分割請求をすれば必ず売却できる?
共有物分割請求は、 単純に「反対している共有者を強制的に説得して 通常の売買契約をさせる手続き」ではありません。
共有状態をどのような方法で解消するのかを 協議・裁判で決めていくものです。
裁判へ進んだ場合には、 不動産の性質や各共有者の事情などを踏まえて 分割方法が判断されます。
そのため、 共有物分割請求をすれば必ず希望どおりの方法で 不動産を処分できるとは限りません。
共有者が反対している場合の進め方
まず登記事項証明書で、 現在の共有者とそれぞれの持分割合を確認します。
可能であれば、
- 不動産を残したい
- 現在住んでいる
- 売却価格に納得できない
- 思い入れがある
- 売却時期に反対している
など、 反対している理由を整理します。
理由によっては、 持分売買などで双方の希望を満たせる可能性があります。
不動産全体が現在いくら程度なのか確認します。
売却価格について意見が合わない場合には、 価格の目安を共有する材料になります。
全体売却ができない場合に備えて、 自分の持分だけならいくらで売却できるのか確認します。
- 不動産全体を売却する
- 相手に自分の持分を売却する
- 相手の持分を買い取る
- 自分の持分だけ第三者へ売却する
- 共有物分割を検討する
という選択肢を比較します。
共有者が住んでいるから売却に反対している場合
実家などでは、 共有者の一人が現在も居住しているため、 不動産全体の売却に反対するケースがあります。
この場合、 居住している共有者からすると、 売却によって住む場所を失う可能性があるため、 強く反対することがあります。
解決策として、 その共有者が他の共有者の持分を買い取り、 単独所有にする方法を検討できる場合があります。
一方、 買取資金を用意できない、 価格について合意できない場合には、 別の方法を検討する必要があります。
「実家だから残したい」と反対された場合
相続した実家では、 経済合理性だけではなく、 家族の思い入れが原因で売却に反対されることがあります。
この場合、 売りたい共有者と残したい共有者の双方が 完全に同じ結論になるとは限りません。
残したい共有者に購入能力があるのであれば、 その人が売りたい共有者の持分を買い取ることで 解決できる可能性があります。
重要なのは、 「売る・売らない」の二択だけではなく、 持分売買によって共有状態を整理できないか検討すること です。
売却に反対されている状態を放置すると?
相続で共有者が増える可能性がある
共有者の一人が亡くなると、 その持分が相続人へ引き継がれることがあります。
その結果、 共有者がさらに増える可能性があります。
全体売却の合意がより難しくなる場合がある
共有者が増えれば、 不動産全体を売却するときに 協力を求める相手も増えます。
固定資産税・修繕費の負担が続く
売却できないまま不動産を保有し続ければ、 固定資産税や建物の修繕などの問題も続く可能性があります。
共有者間の関係がさらに悪化する場合がある
売却の話を繰り返すことで、 共有者間の感情的な対立が深くなるケースもあります。
全体売却がまとまらない場合でも、 ・相手に持分を売る
・相手の持分を買う
・自分の持分だけ売る
・共有物分割を検討する など、共有状態を整理する方法があります。
共有者が反対している場合に避けたいこと
他の共有者の持分まで勝手に売却する
自分の共有持分だけなら原則として売却できますが、 他の共有者が所有している持分まで 勝手に第三者へ売却することはできません。
署名や印鑑を本人の承諾なく使う
不動産全体を売却したいからといって、 他の共有者の意思なく 署名・押印を行うことはできません。
感情的に安い価格で持分を手放す
「とにかく共有関係から離れたい」と考えても、 まず自分の持分価格を確認しましょう。
価格や契約条件を確認せずに売却すると、 後から条件に納得できなくなる可能性があります。
裁判所からの書類を放置する
すでに共有物分割などの法的手続きが進んでいる場合には、 期限が設定されていることがあります。
裁判所から書類が届いた場合には、 内容を確認し、 必要に応じて弁護士などへ相談しましょう。
共有者が売却に反対している場合によくある質問
Q. 共有者の一人が反対したら不動産全体は絶対に売れませんか?
通常の売買で不動産全体を第三者へ売却する場合には、 原則として共有者全員の協力が必要です。 一方、共有状態を解消する方法として、 持分売買や共有物分割などを検討できる場合があります。
Q. 他の共有者が反対していても自分の持分だけ売れますか?
自分が所有している共有持分だけであれば、 原則として他の共有者の同意なく売却できます。
Q. 相手から「第三者には売るな」と言われています
他の共有者が反対しているという理由だけで、 当然に自分の共有持分を売却できなくなるわけではありません。 ただし、個別の契約や権利関係に特別な事情がある場合には確認が必要です。
Q. 共有者が住んでいても自分の持分は売却できますか?
他の共有者が居住しているという事情だけで、 当然に自分の共有持分を売却できなくなるわけではありません。 ただし、現在の利用状況は査定や売却条件に影響する可能性があります。
Q. 共有物分割請求をすれば必ず競売になりますか?
必ず競売になるわけではありません。 共有者間の協議で解決する場合もあり、 裁判へ進んだ場合でも不動産の状況などに応じて分割方法が判断されます。
Q. 反対している共有者と直接話したくありません
自分の共有持分だけを売却する場合には、 原則として他の共有者全員から売却同意を取得する必要はありません。 ただし、売却後には買主が新しい共有者となり、 他の共有者へ連絡する可能性があります。
まとめ|全体売却に反対されても自分の持分は別に考えられる
共有者の一人が売却に反対している場合、 不動産全体を自分一人の判断だけで第三者へ売却することは原則としてできません。
一方、 自分が所有する共有持分だけであれば、 原則として他の共有者の同意なく売却できます。
共有者が反対している場合の主な選択肢は、
- 共有者全員で不動産全体を売却する
- 反対している共有者に自分の持分を買ってもらう
- 自分が他の共有者の持分を買い取る
- 自分の共有持分だけを第三者へ売却する
- 共有物分割によって共有状態の解消を検討する
です。
どの方法が適しているかは、
- 不動産を残したい人がいるか
- 共有者同士で話し合える状態か
- 他の共有者に購入資金があるか
- 自分が今後その不動産を利用したいか
- 現在の共有持分がいくらで売れるか
- どの程度早く共有関係を整理したいか
などによって異なります。
共有者が反対しているからといって、 何もできないまま共有状態を続けなければならないわけではありません。
まず現在の登記・不動産全体の価値・自分の持分価格を確認し、 全体売却、共有者間の持分売買、持分単独売却、共有物分割などを比較して、 自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。



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