相続などによって不動産を複数人で共有していると、 共有者の一人と長期間連絡が取れず、 現在どこに住んでいるのか分からないことがあります。
その状態で不動産を売却しようとすると、
「一人だけ行方不明でも全体を売れる?」
「多数決で売却できない?」
「行方不明者の持分はどうなる?」
「自分の持分だけなら売れる?」
といった問題が出てきます。
共有不動産全体を通常の方法で売却する場合には、 原則として共有者全員の協力が必要です。
そのため、 共有者の一人が行方不明だからといって、 残った共有者だけで その人の持分まで勝手に売却することはできません。
一方で、 行方不明の共有者がいるから 何もできないと決まっているわけでもありません。
状況によっては、
- 住所・所在を調査する
- 不在者財産管理人を利用する
- 所在等不明共有者に関する裁判所の制度を検討する
- 自分の共有持分だけを売却する
といった方法があります。
この記事では、 共有者が行方不明の場合の確認方法、 共有不動産を売却する方法、 不在者財産管理人、 自分の共有持分だけを売却する方法まで解説します。
- 「連絡が取れない」と「行方不明」は同じではない
- まず登記事項証明書を確認する
- 亡くなっていないかも確認する
- 共有者一人が行方不明でも全体売却できる?
- 99%が賛成していても残り1%を勝手に売れない
- 不在者財産管理人とは?
- 不在者財産管理人を選べばすぐ売れる?
- 不在者財産管理人の申立てには費用もかかる
- 誰を不在者財産管理人にするかは裁判所が決める
- 所在等不明共有者に関する制度もある
- 所在等不明共有者の持分取得制度とは?
- 所在等不明共有者の持分譲渡制度とは?
- 自分の共有持分だけなら行方不明者の同意は必要?
- 自分の持分を売却するとどうなる?
- 全体売却と持分売却はどちらがいい?
- 共有者を探すために確認したいこと
- 共有者が行方不明の場合によくある質問
- 共有者が行方不明の場合の選択肢を比較
- 行方不明共有者がいる場合に避けたいこと
- 共有者が行方不明の場合の対応手順
- まとめ|共有者が行方不明でも何もできないわけではない
「連絡が取れない」と「行方不明」は同じではない
最初に確認したいのが、 共有者が本当に所在不明なのかという点です。
たとえば、
- 電話に出ない
- LINEを既読にしない
- 手紙へ返事をしない
というだけでは、 必ずしも所在不明とは限りません。
住所が分かっていて、 単に話し合いを拒否しているだけの場合と、 住所・居所そのものが分からない場合では、 利用できる制度・対応が異なります。
住所は分かるが返事がない
→ 売却に反対・話し合い拒否の問題
現在の住所・居所そのものが分からない
→ 所在不明者への対応を検討
最初に、 本当に所在不明なのかを確認することが重要です。
まず登記事項証明書を確認する
共有者の所在が分からない場合には、 まず登記事項証明書で、
- 現在の登記名義人
- 登記上の住所
- 持分割合
- 所有権取得の時期・原因
などを確認します。
登記簿上の住所が 何十年も前の住所のままになっているケースもあります。
その場合には、 住民票・戸籍の附票などから 住所の変遷を確認できる場合があります。
亡くなっていないかも確認する
長期間連絡が取れない共有者については、 すでに亡くなっている可能性もあります。
もし共有者が亡くなっていれば、 その持分は相続の対象となり、 現在の権利者はその相続人ということになります。
そのため、
「登記名義人と連絡が取れない」
というだけでなく、 現在の相続関係まで確認する必要が生じることがあります。
共有者一人が行方不明でも全体売却できる?
通常の不動産全体の売却では、 原則として共有者全員の協力が必要です。
たとえば、
- A:1/3
- B:1/3
- C:1/3・所在不明
だった場合、 A・Bが売却に賛成しているからといって、 Cの1/3持分まで勝手に第三者へ 売却することはできません。
人数では3人中2人が賛成していますが、 不動産全体の処分は 単純な多数決で決めるものではありません。
99%が賛成していても残り1%を勝手に売れない
同じ考え方は、 持分割合が極端に違う場合でも同じです。
たとえば、
- A:99/100
- B:1/100・所在不明
だったとしても、 Aが99%を持っているという理由だけで、 Bの1%まで含めた不動産全部を 勝手に売却することはできません。
Bの権利をどのように扱うかを 整理する必要があります。
不在者財産管理人とは?
従来から利用されている方法の一つが、 不在者財産管理人です。
従来の住所・居所を去り、 容易に戻る見込みがない人について、 利害関係人などが家庭裁判所へ申立てを行い、 その人の財産を管理する人を 選任してもらう制度です。
不在者財産管理人は、 所在不明者本人の財産を 適切に管理する役割を持ちます。
不在者財産管理人を選べばすぐ売れる?
不在者財産管理人が選任されたからといって、 当然に共有持分を自由に売却できるわけではありません。
不動産売却など、 通常の保存・管理を超える行為を行う場合には、 家庭裁判所の権限外行為許可が 必要になることがあります。
そのため、
- 管理人の選任
- 売却の必要性
- 売買価格
- 裁判所の許可
などを確認しながら 手続きを進めることになります。
不在者財産管理人の申立てには費用もかかる
不在者財産管理人制度を利用する場合には、 申立費用だけでなく、 事案によっては管理人の報酬などに充てるため 予納金を求められることがあります。
そのため、 全体売却によって得られるメリットと、 制度利用に必要な時間・費用を 比較することが重要です。
誰を不在者財産管理人にするかは裁判所が決める
申立人が候補者を挙げることはありますが、 最終的に誰を管理人へ選任するかは 家庭裁判所が判断します。
事案によっては、 弁護士・司法書士などの専門職が 選任されることもあります。
不在者財産管理人は、 所在不明者本人の財産を守るための管理人 です。 他の共有者が不動産を売りたいからといって、 自由に所在不明者の持分を処分する制度ではありません。
所在等不明共有者に関する制度もある
共有不動産については、 民法改正により、 所在等不明共有者がいる場合に利用できる 新しい制度が設けられています。
一定の要件を満たす場合には、 裁判所の手続きを通じて、 所在等不明共有者がいる共有不動産について 管理・変更や持分取得・譲渡などを 進められる制度があります。
ただし、 制度ごとに、
- 必要な調査
- 裁判所への申立て
- 公告
- 供託
- 対象となる行為
などの要件があります。
単に電話がつながらないというだけで すぐ利用できる制度ではありません。
所在等不明共有者の持分取得制度とは?
一定の要件のもとで、 他の共有者が、 所在等不明共有者の持分を 取得することを裁判所へ求める制度があります。
裁判所の決定や 持分価額に相当する金銭の供託など 所定の手続きが必要になります。
これにより、 所在不明者の持分を 他の共有者へ集約できる可能性があります。
所在等不明共有者の持分譲渡制度とは?
一定の要件のもとで、 所在等不明共有者以外の共有者が 自分たちの持分と所在等不明共有者の持分を 第三者へ譲渡するための制度もあります。
不動産全体を第三者へ売却したい場面で 検討されることがあります。
ただし、 利用できる要件・手続きがあるため、 具体的な案件については 弁護士・司法書士などへ確認することが重要です。
自分の共有持分だけなら行方不明者の同意は必要?
自分自身が所有する共有持分だけを売却する場合には、 原則として他の共有者の同意は必要ありません。
そのため、
- A:1/2・所在確認済み
- B:1/2・所在不明
という場合でも、 Aが自分自身の1/2持分だけを 第三者へ売却するのであれば、 原則としてBの同意を得る必要はありません。
つまり、 共有者が行方不明だからという理由だけで、 自分の共有持分まで売却できなくなるわけではありません。
自分の持分を売却するとどうなる?
Aの1/2持分をCへ売却すれば、
- B:1/2・所在不明
- C:1/2
という共有関係になります。
Aは持分全部を売却すれば、 原則としてその共有関係から離れます。
一方、 Cが新しい共有者になります。
全体売却と持分売却はどちらがいい?
価格面だけを考えれば、 共有者全員で 不動産全体を通常の市場で売却できる方が、 持分単独売却より 有利になる可能性があります。
しかし、 所在不明共有者がいる場合には、
- 所在調査
- 裁判所の手続き
- 申立費用
- 手続期間
などが必要になる可能性があります。
そのため、
「多少時間をかけても全体売却したい」
のか、
「自分だけ早く共有関係から離れたい」
のかによって、 選択肢は変わります。
共有者を探すために確認したいこと
登記事項証明書で 最後に登記されている住所を確認します。
住所が分かる場合には、 書面を送付するなどして 連絡可能か確認します。
必要に応じて、 住民票・戸籍の附票などから 住所移転の状況を確認します。
名義人がすでに死亡している場合には、 現在の相続人を確認する必要があります。
調査しても所在が判明しない場合には、 不在者財産管理人や 所在等不明共有者に関する制度などを検討します。
共有者が行方不明の場合によくある質問
Q. 共有者と連絡が取れないだけで行方不明になりますか?
必ずしも行方不明とは限りません。 住所が分かっていて、単に連絡へ応じない場合と、 住所・居所そのものが分からない場合では対応が異なります。 まず現在の住所・所在を確認することが重要です。
Q. 共有者一人が行方不明でも不動産全体を売れますか?
通常の全体売却では、 原則として共有者全員の協力が必要です。 所在不明者の持分まで、 他の共有者だけで勝手に売却することはできません。 状況に応じて裁判所を利用した制度などを検討します。
Q. 99%の持分を持っていても、残り1%が行方不明なら売れませんか?
99%を所有していても、 残り1%の持分まで勝手に処分することはできません。 不動産全体を売却する場合には、 所在不明共有者の持分をどのように扱うか整理する必要があります。
Q. 自分の持分だけなら行方不明者の同意なしで売れますか?
自分が所有する共有持分だけであれば、 原則として他の共有者の同意なく売却できます。 共有者が行方不明という理由だけで、 自分の持分単独売却までできなくなるわけではありません。
Q. 不在者財産管理人とは何ですか?
従来の住所・居所を去り、 容易に戻る見込みがない人の財産を管理するために、 家庭裁判所が選任する管理人です。 所在不明者本人の財産を守ることが目的です。
Q. 不在者財産管理人がいればすぐ売却できますか?
必ずすぐ売却できるわけではありません。 不動産売却など、通常の管理を超える行為については、 家庭裁判所の権限外行為許可が必要になることがあります。
Q. 不在者財産管理人には誰がなりますか?
候補者を挙げることはありますが、 最終的な選任は家庭裁判所が判断します。 事案によっては弁護士・司法書士などの専門職が選任されることもあります。
Q. 所在等不明共有者の持分を自分が取得することはできますか?
一定の要件のもとで、 裁判所の手続きを通じて 所在等不明共有者の持分を取得できる制度があります。 供託など所定の手続きが必要になるため、 具体的な要件を確認する必要があります。
Q. 所在等不明共有者の持分も含めて第三者へ売却できますか?
一定の要件のもとで、 所在等不明共有者の持分を含めて第三者へ譲渡するための制度があります。 ただし、裁判所への申立てなど所定の手続きが必要です。
Q. 行方不明の共有者が実は亡くなっていた場合はどうなりますか?
その共有者の持分は相続の対象になります。 現在の相続人を確認し、 必要な相続登記や権利関係の整理を行う必要があります。
Q. 行方不明者を探すのにどのくらい時間がかかりますか?
登記上の住所、住所の変遷、相続の有無などによって異なります。 所在調査だけでなく裁判所の手続きを利用する場合には、 一定の期間が必要になる可能性があります。
Q. 行方不明者の手続きをするより自分の持分だけ売った方が早いですか?
状況によります。 全体売却を目指す場合には裁判所の手続きを利用する価値がありますが、 自分だけ早く共有関係から離れたい場合には、 持分単独売却の方が進めやすいことがあります。
共有者が行方不明の場合の選択肢を比較
| 方法 | 特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 所在調査 | 現在の住所・生死・相続状況を確認 | 調査に時間がかかる場合がある |
| 不在者財産管理人 | 所在不明者の財産を管理する人を選任 | 売却には裁判所の許可が必要になる場合がある |
| 所在等不明共有者の持分取得 | 一定の要件で他の共有者が持分取得を目指せる | 申立て・供託など所定の手続きが必要 |
| 所在等不明共有者の持分譲渡 | 一定の要件で全体売却に近い処理を検討できる | 裁判所の手続きが必要 |
| 自分の持分だけ売却 | 自分だけ共有関係から離れられる | 売却後は買主と所在不明者の共有になる |
行方不明共有者がいる場合に避けたいこと
連絡が取れないだけで所在不明と決めつける
返事がないことと、 住所・居所が分からないことは別です。
まず、 登記上の住所・住民票・戸籍関係など、 確認できる情報を整理しましょう。
多数決で全体売却できると思う
共有者の大半が賛成していても、 所在不明者の持分まで 勝手に売却することはできません。
不動産全体の売却と、 自分の持分売却を分けて考える必要があります。
所在不明者の持分を勝手に処分する
本人が見つからないからといって、 その持分を他の共有者が 自由に処分できるわけではありません。
必要な裁判所の手続きを確認しましょう。
裁判所の制度を使えばすぐ終わると思う
不在者財産管理人や 所在等不明共有者に関する制度には、 調査・申立て・公告・供託など 一定の手続きが必要になる場合があります。
時間・費用も含めて検討することが重要です。
全体売却だけにこだわる
全体売却のために長期間手続きを続けるより、 自分の持分だけ売却する方が 自分の目的に合う場合もあります。
- 価格を重視するのか
- スピードを重視するのか
- 共有関係から離れることを重視するのか
を整理しましょう。
所在不明者の手続きを行って 不動産全体を売る方法と、 自分の共有持分だけを売る方法 では、 ・価格
・期間
・費用
・手続き量 が異なります。 自分が何を優先するかで判断しましょう。
共有者が行方不明の場合の対応手順
現在の共有者、 持分割合、 登記上の住所を確認します。
必要に応じて、 住民票・戸籍の附票などから 住所の変遷や生死を確認します。
共有者が亡くなっている場合には、 現在の相続人を確認します。
不動産全体を売却したいのか、 自分だけ共有関係から離れたいのかを整理します。
全体売却を目指す場合には、
- 不在者財産管理人
- 所在等不明共有者に関する制度
などを検討します。
裁判所の手続きを利用する場合と比較するため、 自分の共有持分だけを売却した場合の 査定価格も確認します。
まとめ|共有者が行方不明でも何もできないわけではない
共有不動産の共有者が 行方不明になっている場合、 通常の全体売却は そのままでは進めにくくなります。
不動産全体を通常売却するには、 原則として共有者全員の協力が必要だからです。
そのため、
「大多数が売却に賛成しているから、 行方不明者の持分も一緒に売れる」
というものではありません。
99%の持分を持っていても、 残り1%が所在不明であれば、 その1%の権利を適切に処理する必要があります。
まず行うべきなのは、 本当に共有者が所在不明なのかを確認することです。
単に電話・手紙へ返事をしないだけなら、 所在不明ではなく、 話し合いを拒否しているだけかもしれません。
一方、 登記上の住所から転居し、 現在の住所・居所が分からない場合には、
- 登記事項証明書
- 住民票
- 戸籍の附票
- 相続関係
などを確認して 所在調査を進めます。
共有者がすでに亡くなっている場合には、 その持分は相続人へ承継されているため、 現在の相続人を確認する必要があります。
調査しても所在が分からない場合には、 不在者財産管理人制度を 利用する方法があります。
ただし、 不在者財産管理人は 他の共有者の売却を実現するためだけの制度ではありません。
所在不明者本人の財産を 適切に管理することが目的です。
不動産売却などを行う場合には、 家庭裁判所の許可が必要になることがあります。
また、 民法改正によって、 所在等不明共有者がいる場合の、
- 管理・変更
- 持分取得
- 持分譲渡
に関する制度も設けられています。
一定の要件を満たせば、 所在不明共有者の持分を取得したり、 第三者への譲渡を進めたりできる可能性があります。
ただし、 裁判所への申立て・公告・供託など、 所定の手続きが必要です。
そして、 不動産全体の売却と、 自分自身の共有持分の売却は別です。
共有者が行方不明でも、 自分が所有する共有持分だけであれば、 原則として他の共有者の同意なく売却できます。
そのため、
- 時間をかけて所在不明者の手続きを進め、全体売却する
- 自分の共有持分だけを売却して共有関係から離れる
という選択肢を比較できます。
全体売却の方が価格面では有利になる可能性がありますが、 裁判所の手続きに時間・費用が必要になることがあります。
一方、 持分単独売却では、 全体売却より価格が低くなる可能性があるものの、 自分だけ先に共有関係を整理できる場合があります。
共有者が行方不明の場合には、 「もう売れない」と考えるのではなく、 まず登記・住所・生死・相続状況を確認し、 不在者財産管理人や所在等不明共有者に関する制度を利用して全体売却を目指す方法と、 自分の共有持分だけを売却する方法を比較することが重要です。



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