兄弟や親族で共有している空き家やマンションを、 共有者の一人が 他の共有者へ相談せず第三者に貸してしまうことがあります。
たとえば、
- A:1/2
- B:1/2
で共有している実家について、 AがBへ相談せず、 第三者Cと賃貸借契約を締結したケースです。
Bからすると、
「自分も半分所有しているのに勝手に貸せるの?」
「入居者に退去してもらえる?」
「Aが受け取っている家賃はどうなる?」
「今後売却したい場合はどうすればいい?」
と疑問に思うでしょう。
結論からいうと、 共有不動産を第三者へ賃貸する場合、 一人の共有者が常に自由に決められるわけではありません。
賃貸借は共有物の管理に関する行為として扱われる場合があり、 持分割合や契約内容などに応じて 共有者間で適切な意思決定が必要になります。
また、 他の共有者に無断で賃貸借契約が締結された場合でも、
「自分は同意していないから入居者をすぐ追い出せる」
と単純に判断できるとは限りません。
この記事では、 共有不動産を第三者へ貸す場合の決め方、 共有者の一人が勝手に賃貸した場合、 家賃収入、 入居者への対応、 共有状態を解消する方法まで解説します。
- 共有不動産を一人の判断で貸すことはできる?
- 共有物の管理は持分価格の過半数が基本
- 持分50%ずつの場合は?
- 持分60%を持っていれば一人で貸せる?
- 短期の賃貸と長期の賃貸は同じ?
- 共有者の一人が勝手に賃貸したらどうする?
- 同意していない共有者は入居者を追い出せる?
- 勝手に賃貸した共有者が家賃を独占している場合
- 勝手に安い家賃で貸された場合は?
- 勝手に家賃を変更された場合
- 管理会社を通して勝手に賃貸された場合
- 共有不動産を貸す場合に決めておきたいこと
- 共有不動産を賃貸するメリット・注意点
- 共有不動産を貸す前の流れ
- すでに勝手に貸されている場合の対処の流れ
- 入居者がいる共有不動産でも持分は売却できる?
- 入居者がいる不動産全体を売却する場合
- 共有者が売却にも反対する場合
- 共有者が勝手に賃貸した場合に避けたいこと
- 共有不動産の無断賃貸でよくある質問
- まとめ|共有者だからといって自由に不動産全体を貸せるとは限らない
共有不動産を一人の判断で貸すことはできる?
共有不動産について、 自分も共有者だからという理由だけで、 常に自由に不動産全体を第三者へ貸せるとは限りません。
賃貸借は、 契約期間や内容などによって、 共有物の管理に関する事項として 共有者間の意思決定が問題になることがあります。
そのため、 賃貸する前に、
- 現在の共有者
- それぞれの持分割合
- 予定している賃貸期間
- 賃料
- 契約条件
- 共有者間の管理に関する合意
などを確認することが重要です。
共有物の管理は持分価格の過半数が基本
共有物の管理に関する事項については、 原則として 各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めます。
つまり、 共有者の人数だけではなく、 持分割合を確認する必要があります。
たとえば、
- A:60%
- B:20%
- C:20%
なら、 BとCの2人が同じ意見でも、 持分合計は40%です。
単純に、
「3人のうち2人が賛成したから決定」
とは考えません。
・持分割合
・賃貸期間
・賃料
・契約条件
・管理権限
・共有者間の合意 を確認しましょう。 特に長期間の賃貸借では、 契約内容を慎重に確認することが重要です。
持分50%ずつの場合は?
兄弟や元夫婦などでは、
- A:50%
- B:50%
という共有状態がよくあります。
この場合、 持分価格の過半数による決定が必要な事項については、 AだけでもBだけでも 過半数を形成できません。
そのため、 Aは貸したい、 Bは貸したくないという状態になると、 賃貸方針について 合意できない可能性があります。
持分60%を持っていれば一人で貸せる?
持分価格の過半数を持っている共有者は、 管理に関する意思決定で 重要な立場になる場合があります。
ただし、 「60%持っているから、 どんな内容・期間でも自由に貸せる」 という意味ではありません。
賃貸期間や契約内容によっては、 単純な管理行為として処理できるか 個別に確認する必要があります。
特に長期間にわたって 共有者の利用を制限するような契約では、 契約前に法律関係を確認することが重要です。
短期の賃貸と長期の賃貸は同じ?
共有不動産を第三者へ貸す場合には、 賃貸期間も重要です。
短期間の賃貸と、 長期間にわたって共有不動産を 第三者へ使用させる契約では、 共有者に与える影響が異なります。
民法上、 共有物について一定期間を超える賃借権等を設定する場合には、 管理の範囲を超えるものとして扱われることがあります。
そのため、
「賃貸だから全部持分過半数で決められる」
と一律に判断することは避けましょう。
共有者の一人が勝手に賃貸したらどうする?
他の共有者へ相談せず、 すでに第三者との賃貸借契約が締結されている場合には、 まず事実関係を確認します。
確認したいのは、
- 誰が契約したのか
- いつ契約したのか
- 契約期間
- 月額賃料
- 敷金・保証金
- 更新条件
- 誰が家賃を受け取っているか
などです。
賃貸借契約書の内容を確認せず、 入居者へいきなり退去を求めることは避けましょう。
同意していない共有者は入居者を追い出せる?
自分が賃貸に同意していないからといって、 入居者へ、
「私は許可していないので今日出ていってください」
と伝えれば、 直ちに退去させられるとは限りません。
すでに賃貸借契約が締結され、 入居者が居住している場合には、
- 契約を締結した共有者の権限
- 賃貸借契約の有効性
- 契約期間
- 入居者側の権利
などを確認する必要があります。
鍵を交換したり、 入居者の荷物を勝手に外へ出したりするなど、 実力行使によって退去させようとすることは避けるべきです。
勝手に賃貸した共有者が家賃を独占している場合
賃貸した共有者が、 入居者から家賃全額を受け取り、 他の共有者へ一切分配していないケースがあります。
この場合には、 賃貸借契約の問題だけでなく、 家賃収入の分配も問題になります。
共有不動産から発生する家賃収入については、 共有者間では原則として 持分に応じた利益が問題になります。
そのため、 一人の共有者の口座へ家賃全額が入っているという理由だけで、 その人だけの収入になるとは限りません。
まず、
- 毎月の賃料
- 家賃の入金履歴
- 各共有者の持分割合
- 管理費・修繕費などの必要経費
- 固定資産税の負担
- 共有者間の合意
などを整理し、 共有者間で精算が必要か確認します。
勝手に安い家賃で貸された場合は?
共有者の一人が、 周辺相場より大幅に安い賃料で 第三者へ貸してしまうケースもあります。
たとえば、 周辺相場が月15万円程度なのに、 共有者の知人へ月5万円で貸しているケースです。
この場合には、
- なぜその賃料にしたのか
- 誰が賃料を決めたのか
- 共有者間で賃貸について合意があったか
- 契約期間はどのくらいか
- 入居者との契約内容はどうなっているか
などを確認します。
単に、
「相場より安いから無効」
と直ちに判断できるとは限りません。
共有者間の意思決定と、 すでに成立している賃貸借契約について それぞれ整理する必要があります。
勝手に家賃を変更された場合
賃貸開始後に、 一人の共有者が入居者と話し合い、 他の共有者へ相談せず 家賃を値上げ・値下げしてしまう場合もあります。
賃料変更についても、 共有不動産の管理に関する意思決定と 入居者との賃貸借関係の双方を確認する必要があります。
管理会社を通して勝手に賃貸された場合
共有者の一人が管理会社へ依頼し、 他の共有者が知らないうちに 入居者募集・契約まで進んでいるケースもあります。
この場合には、
- 管理会社との契約者は誰か
- 管理会社へどこまで権限を与えていたか
- 入居者募集を誰が依頼したか
- 賃貸条件を誰が決めたか
- 賃貸借契約書の貸主は誰か
などを確認します。
管理会社が関与しているからといって、 共有者間の意思決定の問題が 当然になくなるわけではありません。
共有不動産を貸す場合に決めておきたいこと
共有者全員または必要な共有者間で 賃貸する方針を決める場合には、 契約前に条件を整理しておきましょう。
主に、
- 月額賃料
- 賃貸期間
- 敷金・保証金
- 更新条件
- 家賃の振込先
- 管理会社
- 修繕費の負担
- 家賃収入の分配方法
などです。
賃貸条件だけではなく、 共有者同士で家賃をどう分けるのか まで決めておくことが重要です。
共有不動産を賃貸する場合には、 ・いくらで貸すか
・何年間貸すか
・誰が管理するか
・家賃を誰が受け取るか
・収益をどう分配するか
・修繕費をどう負担するか まで決めておくと、 将来のトラブルを防ぎやすくなります。
共有不動産を賃貸するメリット・注意点
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 家賃収入 | 空き家のまま保有するより収益を得られる可能性がある |
| 維持費 | 家賃収入を固定資産税・管理費などに充てられる場合がある |
| 共有者間の調整 | 賃料・管理・修繕・収益分配などで継続的な調整が必要 |
| 入居者との関係 | 賃貸後は入居者との契約関係も考慮する必要がある |
| 将来の売却 | 賃貸中の状態で売却するか、退去後に売却するか検討が必要になる |
共有不動産を貸す前の流れ
登記事項証明書で、 共有者とそれぞれの持分割合を確認します。
周辺相場を確認し、
- 賃料
- 契約期間
- 敷金
- 更新条件
などを検討します。
持分割合や予定する契約内容などを踏まえ、 共有者間で賃貸方針を決めます。
自主管理にするのか、 管理会社へ委託するのかを決めます。
家賃を誰が受け取り、 必要経費を差し引いた後、 どのタイミングで共有者へ分配するのか決めます。
決定した条件に基づき、 入居者との賃貸借契約を締結します。
すでに勝手に貸されている場合の対処の流れ
まず契約書を確認し、 賃貸期間・賃料・契約当事者などを把握します。
契約を締結した共有者が どの程度の持分を所有しているのか確認します。
- 毎月いくら入金されているか
- 誰の口座へ入っているか
- いつから受け取っているか
を確認します。
家賃収入・管理費・修繕費・固定資産税などについて、 共有者間で未精算がないか確認します。
- 現在の賃貸を継続する
- 契約関係について専門家へ確認する
- 共有者間で持分を売買する
- 自分の持分を第三者へ売却する
- 共有状態そのものを解消する
などから今後の方針を検討します。
入居者がいる共有不動産でも持分は売却できる?
すでに入居者がいる状態でも、 自分の共有持分を売却することは検討できます。
自分が所有している共有持分だけであれば、 原則として他の共有者の同意なく売却できます。
ただし、 査定では、
- 賃貸借契約の内容
- 賃貸期間
- 現在の賃料
- 入居者の状況
- 家賃収入
- 管理方法
- 持分割合
などが確認されることがあります。
入居者がいる不動産全体を売却する場合
共有者全員が売却に合意できるのであれば、 入居者がいる状態で 不動産全体を売却する方法もあります。
賃貸中の収益不動産として 買主へ売却する方法です。
この場合には、 現在の賃貸借契約などについて 買主への承継が問題になります。
共有不動産全体を通常売却する場合には、 原則として共有者全員の協力が必要です。
共有者が売却にも反対する場合
共有者の一人が、
「家賃が入っているから賃貸を続けたい」
と全体売却に反対することがあります。
この場合、 他の共有者だけで 不動産全体を通常売却することはできません。
一方、 自分が所有している共有持分だけであれば、 原則として他の共有者の同意なく売却できます。
また、 共有状態そのものを解消したい場合には、 共有物分割を検討する方法があります。
共有者が勝手に賃貸した場合に避けたいこと
入居者をいきなり追い出す
自分が賃貸に同意していなかったとしても、 入居者との契約関係を確認せず 実力で退去させることは避けましょう。
鍵を勝手に交換する
入居者が使用している建物について 一方的に鍵を交換するなどの方法は、 別のトラブルへ発展する可能性があります。
家賃を自分へ払うよう直接要求する
現在の契約関係や家賃の支払先を確認せず、 入居者へ別口座への支払いを要求すると、 入居者を混乱させる可能性があります。
賃貸借契約書を確認しない
まず契約内容を確認しなければ、 賃料・期間・更新条件などを正確に把握できません。
共有不動産の無断賃貸でよくある質問
Q. 共有者の一人が私に無断で家を貸しました。契約は必ず無効ですか?
他の共有者の同意がなかったという事情だけで、 すべての賃貸借契約が当然に無効になるとは限りません。 契約を締結した共有者の持分割合、 賃貸期間、契約内容、権限などを確認する必要があります。
Q. 同意していないので入居者をすぐ退去させられますか?
直ちに退去させられるとは限りません。 すでに成立している賃貸借契約や、 契約した共有者の権限などを確認する必要があります。 実力行使ではなく、 必要に応じて弁護士などへ相談して対応しましょう。
Q. 50%ずつの共有で一人だけが勝手に貸せますか?
賃貸借が共有物の管理に関する事項となる場合、 持分価格の過半数による意思決定が問題になります。 50%だけでは過半数ではないため、 契約内容などを含めて慎重に確認する必要があります。
Q. 持分60%を持っていれば一人で貸せますか?
持分価格の過半数を所有している場合には、 管理に関する意思決定で重要な立場になることがあります。 ただし、どのような賃貸借でも自由に締結できるという意味ではありません。 賃貸期間や契約内容によって扱いが異なる可能性があるため、 具体的な契約内容を確認する必要があります。
Q. 勝手に貸した共有者が家賃を全部受け取っています
家賃が一人の共有者の口座へ振り込まれているという理由だけで、 その家賃収入のすべてが当然にその共有者だけのものになるとは限りません。 持分割合、必要経費、共有者間の合意などを確認し、 家賃収入について精算が必要か検討します。
Q. 相場よりかなり安い家賃で勝手に貸されています
まず賃貸借契約書を確認し、 賃料・契約期間・契約当事者などを把握します。 相場より安いという理由だけで直ちに契約が無効になるとは限らないため、 共有者間の意思決定と入居者との契約関係を分けて確認することが重要です。
Q. 共有者が自分の知人を無料で住ませています。これは賃貸ですか?
賃料を受け取らず使用させている場合には、 通常の賃貸借とは異なる法律関係が問題になる可能性があります。 誰が、どのような合意で、いつから使用させているのかを確認し、 必要に応じて専門家へ相談することが重要です。
Q. 入居者がいる状態でも自分の共有持分は売却できますか?
自分が所有している共有持分だけであれば、 入居者がいる状態でも売却を検討できます。 原則として他の共有者の売却同意は必要ありません。 ただし、賃貸借契約の内容や賃料、 入居状況などは査定価格に影響する可能性があります。
Q. 自分の持分を売却したら入居者は退去することになりますか?
共有持分を売却したという理由だけで、 入居者が当然に退去するとは限りません。 持分の買主が新しい共有者となり、 既存の賃貸借関係については契約内容や権利関係を確認する必要があります。
Q. 入居者がいる不動産全体を売却できますか?
共有者全員が売却に協力できるのであれば、 入居者がいる状態で収益不動産として 不動産全体を売却できるケースがあります。 その場合には、 賃貸借契約や敷金など、 買主へ引き継ぐ内容を整理する必要があります。
Q. 無断賃貸でもめているので共有状態そのものを解消したいです
共有者間で持分を売買する、 自分の共有持分を第三者へ売却する、 共有者全員で不動産全体を売却するなどの方法があります。 任意の話し合いで共有状態を解消できない場合には、 共有物分割を検討する方法もあります。
まとめ|共有者だからといって自由に不動産全体を貸せるとは限らない
共有不動産については、 自分も所有者だからという理由だけで、 一人の共有者が常に自由に不動産全体を第三者へ貸せるとは限りません。
賃貸借が共有物の管理に関する事項として扱われる場合には、 原則として持分価格の過半数による 意思決定が問題になります。
そのため、
- A:60%
- B:20%
- C:20%
という共有状態では、 共有者の人数だけではなく それぞれの持分割合を確認する必要があります。
一方、
- A:50%
- B:50%
という共有状態では、 持分価格の過半数による決定が必要な事項について、 一方だけでは過半数を形成できません。
また、 賃貸期間や契約内容によっては、 単純に「管理だから過半数で決めればよい」とは限らない点にも注意が必要です。
すでに他の共有者が勝手に第三者へ貸している場合には、 感情的に入居者へ退去を求める前に、
- 賃貸借契約書
- 契約を締結した共有者
- その共有者の持分割合
- 契約期間
- 月額賃料
- 更新条件
- 家賃の振込先
などを確認しましょう。
自分が賃貸に同意していなかったとしても、 すでに入居者との契約関係が存在する場合には、
「自分は許可していないから今日退去してください」
と単純に処理できるとは限りません。
鍵を交換したり、 入居者の荷物を勝手に搬出したりするなど、 実力行使によって解決しようとすることも避けるべきです。
また、 無断で賃貸した共有者が 家賃収入をすべて受け取っている場合には、 賃貸借の問題とは別に、 共有者間で家賃収入の精算が問題になることがあります。
その際には、
- 家賃収入
- 持分割合
- 管理費
- 修繕費
- 固定資産税
- その他の必要経費
などを整理することが重要です。
そして、 今後も共有不動産を賃貸するのであれば、
- いくらで貸すか
- どの程度の期間で貸すか
- 誰が管理するか
- 誰が家賃を受け取るか
- 家賃収入をどう分配するか
- 修繕費をどう負担するか
などについて、 共有者間でルールを決めておくことが重要です。
一方、
- 勝手に賃貸される
- 家賃を独占される
- 賃料変更でもめる
- 管理会社でもめる
- 売却にも合意できない
という状態が続いているのであれば、 問題は賃貸借だけではなく、 共有状態そのものにある可能性があります。
その場合には、
- 他の共有者へ自分の持分を売却する
- 他の共有者の持分を買い取る
- 自分の共有持分を第三者へ売却する
- 共有者全員で不動産全体を売却する
- 共有物分割によって共有状態を解消する
などを比較できます。
共有不動産を勝手に賃貸された場合は、 入居者をすぐに退去させようとするのではなく、 持分割合・賃貸借契約・契約期間・家賃収入・共有者の権限を整理し、 今後も共同で不動産を管理するのか、 共有持分の売買などによって共有関係そのものを整理するのかまで 検討することが重要です。



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